|
夜八時からのタンゴのレッスンの前、少し早めに行って
京橋の骨董屋さんや画廊を回るのはちょっと楽しい。
夜色の風に白い月がゆらゆら笑う。
それにしてもこの辺は喫茶店がないのねえ。
歩き疲れてふらっと高島屋に。
セールの時期か...そんなことよりお茶が先だわ...
「一番きれいな喫茶店はどこですか?」
「この階の突き当たりにあるカフェがよろしいかと存じます。」
貸し切り状態のお店。
ソファで我が家のようにくつろいで、お紅茶でほっと一息。
ふと、真っ赤な色に囲まれていることに気づくと、真っ赤な絵に目が釘付け。
懐かしい赤。時間が過去に遡る...
近づいてみて、やっぱり!
これ黒田アキさんの絵じゃない!
パリに住みたての頃、よく一緒に出かけて
アトリエまで遊びに行ったHなおじさんの赤。
神話や哲学、建築、色、
カフェで沢山話し合った彼の世界のエネルギーが
この赤には込められている。
内装はきっと森田さんなんだろうな...ここは。
森田さんの赤い空間と黒田さんの赤い哲学。
赤は私の創造力まで刺激する。
 
私は、頭の中で油絵の具を混ぜていた。
海の青に近づけようと、いろんな色の青い絵の具を混ぜていた。
どこまでもどこまでも混ぜ続けて、私の青は海にとうとう溶けて消えてしまったら、
そんなことをしていた若い頃を思い出した。
静物がのっているビロードの生地の黒に近づきたくて、
黒い油絵の具に、ワインレッドを混ぜていく、レモン色や深い夜色を混ぜていく。
黒はすべてを飲みこんでも相変わらず黒のままだけれど、明らかに表情をかえていく。
黒は悪魔のように嘲笑し、私を魅了し黒に吸い込まれていった15の秋。
いいな、黒田さん。
そういうのが仕事だなんて...
最近は銀座のモーブッサンも黒田さんの世界になって驚いた。
私は人の作品を扱うディーラーだから、
美しいものを沢山の人に届けるのが仕事。
でも、、もし自分自身が、黒田さんや森田さんのように、
沢山の人が喜ぶような色の世界を生み出せたら
それ以上幸せなことはないだろう....
赤に包まれて、心地よくひとり熱くなり
妄想はあとからあとから止めどない。
そういえば、鳥沢さんのヴォイス診断、
今回の処方箋は赤だったわ!
本来の自分を見失わないための鍵。
声は嘘をつかないことを毎回知らされる。
そこに隠れている大きなヒントを鳥沢さんが明らかにして下さる。
今度はもっと色について、鳥沢さんとお話したいなあ....
また赤いカフェで。
|